神学生紹介
原田仰

神学研究科修士課程 2年 原田仰
推薦教会:平尾バプテスト教会
研修教会:久留米荒木キリスト教会

一方では危険と隣り合わせ、もう一方の隣にあったのは

夏に研修をさせていただいている教会のキャンプに参加した。幼児から高校生までの子 どもたちが寝食を共にし、貴重な夏休みのひと時を仲間たちと過ごした。その教会に集う 子どもたちは、おそらく他の教会に比べパワフルで自由奔放である。彼らが日々の礼拝で 過ごしている様は、世間一般が抱くであろう「教会は厳かで静かな場所」というイメージ とは真逆である。そんな子どもたちと過ごすキャンプは大人にとって、かなりの緊張感を もった苦労の絶えないものになるだろうと予想した。川遊びや BBQ など危険を伴うもの だったからだ。しかし、その心構えはいい意味で裏切られることになる。
特に緊張を要したのは川遊びであった。子どもたちの命を預かる大人にとっては気が気 でないプログラムの一つである。安全性を担保するため、川の下見調査、危険なラインの 見張り、子どもたちには全員にライフジャケットを着用させた。結果から言えば、この川 遊びで事故はおろか怪我をした子すらいなかった。前述したような大人の下準備のおかげ もあるが、私が思うに怪我がなかった最大の要因は大人ではなく、遊んでいた子どもたち 自身にあるように思えた。大人たちが行っていたのは命に係わるラインの見張りと簡単な 補助がほとんどで、基本的に自由にさせていた。そして自由奔放な子どもたちだ、静かな 遊びをしているのでもなかった。それはもう豪快だった。しかし、ただ彼らは何も考えず に遊んでいるのでもなかった。自分が遊んでいるその場がどれほどの危険を孕んでいるの かを理解していた。そして自分だけでなく、共にいる仲間のことも気遣っていた。興味 津々ながらに恐怖も感じている小さい子には「君はダメ」と即座に禁ずるのではなく、年 上の子が「ここに居てあげるから○○すれば大丈夫だよ」と言ったり、私が補助につくの を待たせたりして、自分たちで安全を確保しつつ、その子が最大限楽しめるような工夫を 行っていた。
世の中には多くの危険があり、それをすべて避けることは不可能である。時には危険と 隣り合わせの恐怖の中を歩まねばならない。これが現実だ。ただこのキャンプは、この現 実が悲観に終らないことを子どもたち自身に、そして企画した大人たちに教えてくれた。 隣にあるのは危険や恐怖だけではないと、共に突き進んでくれる、助けてくれる仲間もま たいるし、他者にとって自分がその一人となるのだと。それは嬉しく楽しいことなのだと。 子どもたちがこの先を歩む中で、この経験が気づくきっかけになることを願う。聖書が語 る隣人愛のすばらしさと、神が自分にとって最大の隣人であることの喜びを。

関連記事

TOP
TOP